Pコートは重いほどいい?

古いPコートは肉厚な生地で作られていることが多く、風を通さない。
その分ずっしりと重いが、とても暖かく、とても頑丈な外套(コート)だ。

古いPコートは持つと重いが、着ると軽く感じられるものが多い。
その秘密はテーラリング(仕立て)だ。

身体のラインに沿って立体的に作られている、テーラリングの良い服は、着ると重さが分散され、肩が凝らないようになっている。

だからPコートは衝動買いをしてはいけないアイテムだ。
これでもかと納得いくまで試着して、身体に合うかどうかフィーリングをしっかり確かめてから買わないといけない。
重厚なコートだけに、身体に合わないと袖を通す機会は減り、宝の持ち腐れになってしまう。

USNの13スター10ボタンのPコートや、士官用のPコートはかっこいいが、強烈に重い。
昨今は出物も少なくなり、相場は高騰。「あ~あ、安い時期に買っておけば・・・」と、古着にはありがちな後悔をしても、いまでは遅い。

1、フランス製のPコート?

13スターではないが、古着屋で、気になる一着を見つけた。
メルトンではなく、ウールサージで作られた正体不明のPコート。

grand largue vetement DE MARINE

全体的に使用感はあるものの、やれ具合はミントコンディション。
ボタンの塗装が所どころ剥がれかけ、エージングされている姿がカッコイイ。
羽織ってみると重くもなく軽くもない丁度いいバランス&シルエットもキレイだ。

袖が立体裁断になっていて、腕が動かしやすいのは○だ。
ハンドウォーマーポケットの裏地はチェックになっていて、切り替えの裏地にありがちな安っぽさが見当たらない。細部に手を抜かない姿勢はポイントが高い。

左右内ポケットには真鍮のジッパーが付けられていて、“ECLAIR”と書いてある。
ブランドネームは『grand largue vetement DE MARINE』。
ネームの下にはペンサイズのポケット。

襟元にはチンストラップが付く。
簡素だが、ポイントは押さえてあり、全体的にしっかりとした作りに好感を覚える。

適度に力の抜けた雰囲気もあり、アメリカ製の質実剛健なイメージとは違う軽やかさがある。
これはきっとフランス製のものだが、おそらくサープラスではない。

2、古着を調査しろ

古着を買ったら調べるのがマイルールだが、ネットで調べても詳細はわからなかった。
タグの図案がフランスのブルターニュ半島の海岸線と一致したことと、フランス語表記から、マイナーなフランスブランドなんだろうなと分かったことぐらいだ。
(excite翻訳では「偉大な海洋の衣服」と翻訳された)

grand largue vetement DE MARINEピーコート画像
ブルターニュ半島のプリントタグ

もう一つ、内ポケットの“éclair”というファスナーは、80年代までのルイ・ヴィトンに使われることが多かったファスナーだということがわかった。

このコートはたぶん、古着的な価値はあんまりない、庶民的なコートであろう。

シルエットは本当にきれいで、テーラリングに定評のあるScyeに似ている。
テーラリングの良い服は、手に持つと重く、着ると軽くなるからふしぎだ。

3、アメリカ軍と日本軍

以前、1940年頃の軍服を試着したことがある。
日本軍のものと、アメリカ軍のものだ。

袖を通した時に「これは日本が負けるはずだ・・・」と痛覚させられた。
日本軍の服は着るとやたら重く感じて突っ張るのに、アメリカ軍の服はフィットしながら動きやすい。

誤解を怖れずに言えば、一着の軍服に込められたこの余裕が、戦争の勝敗を分ける、大きな要因だったのではないだろうか・・・。

テーラリングは、着やすさ、動きやすさ、シルエットの美しさそれ以上に、時にはもっと大きな運命すら変えてしまう力があるものなのじゃないだろうか・・・?

4、Pコートを探そう

Pコートは仕立ての良い、分厚くて重いものを選ぶのが鉄則だ。
そして必ず試着を忘れてはならない。気の済むまで試着してお気に入りの一着と出会えば、冬の相棒として、肌身離せない宝物となるはずだ。

この冬、古着屋巡りをして、お気に入りのPコートを探してみるのも一興ではないだろうか?

grand largue vetement DE MARINE ピーコート フランス製 1000円
―2018-12-06―

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https://i0.wp.com/yasashii.wp.xdomain.jp/wp-content/uploads/2018/12/p-coat21.jpg?fit=800%2C600https://i0.wp.com/yasashii.wp.xdomain.jp/wp-content/uploads/2018/12/p-coat21.jpg?resize=150%2C150asdaj1278衣類衣類Pコートは重いほどいい? 古いPコートは肉厚な生地で作られていることが多く、風を通さない。 その分ずっしりと重いが、とても暖かく、とても頑丈な外套(コート)だ。 古いPコートは持つと重いが、着ると軽く感じられるものが多い。 その秘密はテーラリング(仕立て)だ。 身体のラインに沿って立体的に作られている、テーラリングの良い服は、着ると重さが分散され、肩が凝らないようになっている。 だからPコートは衝動買いをしてはいけないアイテムだ。 これでもかと納得いくまで試着して、身体に合うかどうかフィーリングをしっかり確かめてから買わないといけない。 重厚なコートだけに、身体に合わないと袖を通す機会は減り、宝の持ち腐れになってしまう。 USNの13スター10ボタンのPコートや、士官用のPコートはかっこいいが、強烈に重い。 昨今は出物も少なくなり、相場は高騰。「あ~あ、安い時期に買っておけば・・・」と、古着にはありがちな後悔をしても、いまでは遅い。 1、フランス製のPコート? 13スターではないが、古着屋で、気になる一着を見つけた。 メルトンではなく、ウールサージで作られた正体不明のPコート。 全体的に使用感はあるものの、やれ具合はミントコンディション。 ボタンの塗装が所どころ剥がれかけ、エージングされている姿がカッコイイ。 羽織ってみると重くもなく軽くもない丁度いいバランス&シルエットもキレイだ。 袖が立体裁断になっていて、腕が動かしやすいのは○だ。 ハンドウォーマーポケットの裏地はチェックになっていて、切り替えの裏地にありがちな安っぽさが見当たらない。細部に手を抜かない姿勢はポイントが高い。 左右内ポケットには真鍮のジッパーが付けられていて、“ECLAIR”と書いてある。 ブランドネームは『grand largue vetement DE MARINE』。 ネームの下にはペンサイズのポケット。 襟元にはチンストラップが付く。 簡素だが、ポイントは押さえてあり、全体的にしっかりとした作りに好感を覚える。 適度に力の抜けた雰囲気もあり、アメリカ製の質実剛健なイメージとは違う軽やかさがある。 これはきっとフランス製のものだが、おそらくサープラスではない。 2、古着を調査しろ 古着を買ったら調べるのがマイルールだが、ネットで調べても詳細はわからなかった。 タグの図案がフランスのブルターニュ半島の海岸線と一致したことと、フランス語表記から、マイナーなフランスブランドなんだろうなと分かったことぐらいだ。 (excite翻訳では「偉大な海洋の衣服」と翻訳された) もう一つ、内ポケットの“éclair”というファスナーは、80年代までのルイ・ヴィトンに使われることが多かったファスナーだということがわかった。 このコートはたぶん、古着的な価値はあんまりない、庶民的なコートであろう。 シルエットは本当にきれいで、テーラリングに定評のあるScyeに似ている。 テーラリングの良い服は、手に持つと重く、着ると軽くなるからふしぎだ。 3、アメリカ軍と日本軍 以前、1940年頃の軍服を試着したことがある。 日本軍のものと、アメリカ軍のものだ。 袖を通した時に「これは日本が負けるはずだ・・・」と痛覚させられた。 日本軍の服は着るとやたら重く感じて突っ張るのに、アメリカ軍の服はフィットしながら動きやすい。 誤解を怖れずに言えば、一着の軍服に込められたこの余裕が、戦争の勝敗を分ける、大きな要因だったのではないだろうか・・・。 テーラリングは、着やすさ、動きやすさ、シルエットの美しさそれ以上に、時にはもっと大きな運命すら変えてしまう力があるものなのじゃないだろうか・・・? 4、Pコートを探そう Pコートは仕立ての良い、分厚くて重いものを選ぶのが鉄則だ。 そして必ず試着を忘れてはならない。気の済むまで試着してお気に入りの一着と出会えば、冬の相棒として、肌身離せない宝物となるはずだ。 この冬、古着屋巡りをして、お気に入りのPコートを探してみるのも一興ではないだろうか? grand largue vetement DE MARINE ピーコート フランス製 1000円―2018-12-06―クローゼットの中を私物を研究してゆくブログです